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「小さいおうち」 中島京子 著

女中さんだった女性が書いた回想録、という形の小説。
女中さんというのがどんなものだったか、その様子を感じることができる。
酷使される使用人という感じではなく、家族と一緒に暮らして、家族旅行にも子守として同行して、一緒に美味しいものを食べたりもして、人によっては学校に行かせてもらったり、お見合い相手を世話してもらうこともあったり。女中さんと雇い主の家庭との関係は厳しい主従関係ではなかったようで。
奥様が他の男性に抱いた淡い気持ち、それに気づいたその女中の狼狽ぶりなども描かれている。
けど、興味深かったのは、第二次世界大戦の時期の描写。

戦争というと、身の回りの全てが戦争という色を帯びて、何もかもが平時とは違ってしまうような印象を持つけれど、この女中さんが体験したのはそうではない。少しずつ物資が手に入りづらくなったけれどその中で工夫して日々を過ごし、楽しく過ごす日もあり、旦那様は大本営発表を信じ、日本は大丈夫だどんどん攻め込んでいくんだと信じ。「戦争」ではなく「事変」と伝えられ、戦況は常に優勢であると報じられ。。。
戦争ってある日突然始まるんじゃなく、じわじわと見えないところで進んでいくんだなぁ、と感じた。後世の人から見れば「それって戦争じゃん」ということも、当時の人たちにとってはそうは見えてなかったようで。

今のざわつく世界は後世からはどう見えるんだろう?と思ったりして。
面白い小説でした。

小さいおうち

中島 京子 / 文藝春秋




今年の目標に「月1冊以上、小説を読む」と決めたので、レビューも一応書いておこう。これは1月分。

by studio-yaya | 2015-02-23 22:37 |  

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