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「パリの女は産んでいる」  中島 さおり 著

とっても面白かった!

先進国の多くが少子化傾向にある中、出生率が上がっているのがフランスとアメリカ。アメリカはまぁ中南米とかから来た移民が産んでるというケースも多く、ずっと人口が増え続けてるのでちょっと別として。フランスは様々な制度改革などを通して出生率を"あげた"国。

著者はフランスに留学もし、フランス人と結婚、出産も経験してパリで育児している。そんな著者の言葉はとても説得力がある。リアルな"産む"フランス人の姿がある。但し、場所は大都会パリ。著者のママ友は弁護士やら有名ファッションブランドの広報担当だの、かなりアッパークラスに限られているようなので、これがフランス全体の実態ではないとは思う。あくまで、パリの話ね。

あぁそうか、ととても納得できたこと。
フランスはフェミニズムの波の中で女性を解放してきた。女性達は仕事を持ち、経済的に独立し、ピルの普及で"産まない自由""産まなくても一人の人間として生きていける自由"を手にした。粉ミルクの普及、保育園の普及やベビーシッター利用時の補助などもあり、母親は育児の束縛から解放された。
「女性は子どもを産むもの」という束縛から解放され、「産むか産まないかは私が決める」と女性は決定権を手にした。「産むのが当然」と押し付けられている間は、女性は「産まない」と言うことでしか自己主張できなかった。が、今は産むことも産まないことも自分の意志で選べるようになった。
どっちもアリの状態になって初めて、女性は「積極的に産む」ことができるようになった。それが出生率の向上だ、と。。。

そうなの、そうなんだよ~。
そこなんだよ。女は産んで当然でしょ、産んだら自分で育てるのが当然でしょ、と押し付けられてるうちは女性はしんどい思いをし続けることになる。産みたくなくなるのも当たり前だ。
本当は子どもが欲しい。もう一人、二人欲しい。そう思ってる人は決して少なくないのに、産むと様々な不利益も背負いこまなくちゃいけないから、産まない。その結果が今の少子化だと思う。
一旦、解放してくれないかね。自由な状態で聞けば「産みたい」と言う女性はいっぱいいるはずなんだから。


ちょっと話は違うかもしれないけど、夫婦別姓のことも頭をよぎった。
これも「女が苗字を変えて当然」と押し付けられてるのが嫌なんだな。どっちだって選べる、と言う人もいるけど、よっぽどの事情がない限り、周囲の目やら何やらもあってほぼ自動的に男性側の苗字を名乗ることになっている。
どっちでもいいよ、という制度にしたところで、皆が皆別姓になるわけじゃない。アメリカだって別姓が可能だけど実際のところは大半が夫婦同姓を選んでいる。それは「好きな人と一緒の苗字になりたいから」なんていうごくごく平凡な幸せな理由だったりする。自由に選べる選択肢があることで、主義主張を持った上で自分の好きな道を選べる。今の日本は別姓が認められていないので、それができない。
そういうことなんだよね。。。


但し、何でもフランスを真似ればいいってわけでもないのは本の中でも触れている。例えば安い給料で働いてくれるベビーシッターは外国からの移民や出稼ぎ労働者だったりする。フランス語の能力の怪しい外国人に子どもを任せて、果たして正しい言葉やフランス流の習慣を教えられるのか? 事実婚も離婚も多いフランスでは、アメリカ同様、再婚後の家族の関係がぎくしゃくすることもある。など。日本流が優れていると思われるところもあるわけで、それを踏まえつつ日本流の少子化対策をしなくちゃいけないのよね。


子ども手当をばらまくより、この"産まない自由""女性の決定権"のあたり、考えてほしいものです。

★★★★★

パリの女は産んでいる―“恋愛大国フランス”に子供が増えた理由

中島 さおり / ポプラ社


by studio-yaya | 2010-10-05 22:22 |  

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